彼の瞳に捕まりました!


「ペース早くない?」

「気のせいだろ?」

「そう、かな?」

歯切れの悪い返事をした私に、高瀬はため息をついて見つめた。

「ペース早いのはナホの方だろ?
それ、何杯目だよ」

「……」

「久しぶりに女に見られた事にビビってんの?」

意地悪な言葉に、目を見開く。
そんな私に高瀬は、
「図星かよ」
と、舌打ちをした。

「な、何よっ。なんにも話してないじゃない」

「馬鹿じゃねぇの。
ナホみたいな単細胞、顔見りゃ一発だろ?」

「って、何よそれ」

「そのまんまだろ?ナホの考えてる事なんて、顔に書いてあるんだよ」

お皿に残っていた焼き鳥をかじりながら、高瀬は冷たい声をだすと、店長が差し出したハイボールのお代わりを受け取った。

「おやっさん、ナンコツの塩、それからレバーをタレで」

店長は、高瀬に一瞥をくれると「はいよ」と、だけ返事をして、焼き鳥を焼きはじめた。


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