彼の瞳に捕まりました!


いつもそうだ。

冷たいくせに、優しくて……
無愛想なくせに、甘えさせる。

こんなんじゃダメなのに、そう思ってる癖に。
高瀬にだけは負けたくない。
そう考えてる癖に。

結局、高瀬の優しさに甘えてる。

そんな自分が情けない。

そう思うのに――――


カウンターの隣りで顔色一つ変える事なくハイボールを次々に飲む高瀬。
テーブルに申し訳程度に置かれたおつまみも次々に彼の口の中に消えて行く。

会社近くの古びた焼き鳥屋。
10人も入れば満員のそこは、高瀬が新入社員として会社に入った時に先輩に教えてもらった、隠れた名店だ。

「食わねぇの?」

ビールばかりを飲む私を不思議そうな顔で高瀬は見つめた。

「食べてきたから」

「へぇ」

興味なさ気に返事をすると、カウンターの向こうで焼き鳥を焼く店長にハイボールのお代わりを告げた。


< 59 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop