短編集
マイノリティー少年少女
※イジメ表現あり



 ロマンティックが突然始まることなんてありえなくて、悪い意味でクラスメートに絶大なる人気を誇る俺なんか特に、ロマンティックは遠い存在だ。それも、きっとこの一生では垣間見ることもないくらいに遠い。超現実主義バンザイ、だけどリアルが充実している奴は直ちに爆発しろ。

 今日も俺は、昼休みに埃と飲みかけのジュースと食べかけの弁当でコラージュした制服を、ボタンを飛ばす勢いで滅茶苦茶に着崩して、教室の隅でゴミ箱と一緒に座っていた。今日のポイントは頭に乗った焼きそばパン。俺がひとつ動作をするたびに落ちる焼きそばなんて今日のファッションの最高のスパイスだろ。

 自分でも見てゾッとするくらい惚れ惚れする。だがしかし、こんなにアーティスティックなのは、なにも俺だけじゃない。俺の机とその周囲も、飲食物や思わず目を逸らしたくなるほどにロックテイストを遥かに超えてしまう尖ったメッセージで前衛的にデコレーションされている。あまりにもデコっているから、引き算の美として椅子自体がないのもまた乙なもんだ。枯れかけた一輪の菊の花が儚さを醸し出していて、俺はプロデューサーに尊敬と嫉妬を通りこして殺意の目を向けたくなる。

 センスのない奴がよくする、僻みというやつだ。俺はその時点で、若干14歳にしてプロデューサーでありクラスのリーダーであるカリスマ性溢れるあいつに敗北していた。それはクラス公認で、俺は日々あいつの使い走りをしなければならなかった。良い意味で言うならば、師匠と弟子の関係性だ。実際はそんな生易しいものじゃねえけど。

 だったらせめて、テラシマさんよりは優れていたいと思った。目に見える『テラシマさんより優位』という椅子が欲しい。それは、俺を筆頭に、テラシマさんを除いたこのクラスのみんなが思うことだった。


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