魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
問題はどうやってオーディンを捜すか――


結局この日はその方法を見出すことができず、夕暮れが近付くにつれラスはティアラの腕にひっついて離れなくなった。


「帰っちゃうの?やだよティアラ…今日は泊まってってっ」


「ええ、そのつもりで来たの。でも着替えを持って来てないからあなたのを貸してもらえる?」


「うんっ!ティアラ大好きっ!」


そして左隣に座るベルルの手も抱いて両手に花状態のラスがにこにこしていると、父のカイが顔を出しに来た。


「ティアラ王女、よかったらディナーをご一緒にどうかな」


「!か、カイ陛下!よろしいのですか?」


「ええ、ラスもあなたに会えるのを楽しみにしていましたし、私もフィリアの愛娘のあなたにお会いしてみたかった」


ティアラにとってのカイは“勇者様”で、いつも母から魔王を倒した時の話を聞いて育ったため、憧憬の眼差しで頭を下げた。


まだ30代のカイがラスにウィンクをして去ると、ティアラは頬を赤く染めてもじもじし始めた。


「わ、私…正装してくればよかったわ。神官衣で失礼にならないかしら」


「ティアラはお父様が好きなの?駄目だよお父様はお母様のだもん。それにティアラにはリロイが居るでしょ?」


嫌味ではなく、心からそう言ってくれるラスに小さく笑いかけると、ホットミルク入りのマグカップを両手で包み込んで首を振った。



「私…近いうちに結婚するの。家柄も良くて優しくて…とても素晴らしい方よ。そして私が女王になって、国を継ぐの。だからリロイのことはもうなんとも思ってないわ」


「…ティアラ…」


「そのディナー、私は行かないから。あいつを見ると殺したくなっちゃうから」



コハクを傷つけたリロイを絶対に許すことのできないベルルがソファに寝転がり、ティアラとラスはバルコニーに出ると、神に祈りを捧げた。


「神様…道標を示して下さい。神様…私にコーを返して」


「…ラス…」


いたたまれないが、ラスが前向きなことはその表情でわかる。

なのでティアラも何も言わず、白い息を吐いて空を見上げるラスの手をそっと握って中へと促した。


その時、空にまた――

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