魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】

そこに、愛。

メニューは多少違えど、ラスがスープを飲めばデスも飲み、ラスがパンを齧ればデスもパンを齧り…


“食べる”ということをひとつひとつラスから学び、ますます母性を刺激されたラスはデスの口元についたスープをナプキンで拭いてあげた。


「ねえ、今日は3人で一緒に寝ようよ。私真ん中がいいな」


「3人で!?そんなプレイ大かんげ……じゃなくて!ベッドが狭くなるじゃん!俺反対!」


「コーは反対ばっか。じゃあコーはソファで寝て私とデスがベッドで寝るのはどう?」


「どうっつーか駄目に決まってんじゃんか!チビ…もしかして俺をいじめて楽しんでるんじゃ…」


被害妄想で頭の中が押し潰されそうになっていた魔王がいじけそうになると、ラスは身を乗り出してコハクの頬にちゅっとキスをした。


「駄目?」


「……今日だけだからな」


肝心のデスはそんな2人の会話を聴いてはいたのだが…いまいちぴんと来ていないのか、食事を終えるとソファに移動して膝を抱えて座りながら首を傾けた。


「…………一緒に…寝る…?」


「うん。3人で寝ようよ。あ、ベルルは小さくなってね。じゃあ3人じゃなくって4人で。誰かと寝たことある?」


「………ない」


「私もあんまりないけどみんなで寝ると楽しいよ。お布団被ってお互いに秘密を言い合うの。絶対面白いよ、そうしようよ」


はしゃぐラスを止めるのを諦めたコハクはドアを開けて待機していた魔物たちに後片付けをさせると食後の紅茶をソファの前の小さなテーブルに並べた。


「まあそういうわけだからお前も付き合え。間違ってもチビのあちこち触るんじゃねえぞ。触っていいのは俺だけ!」


「………わかった」


「えー?あたし死神と寝るのヤだな…」


「そんなこと言わないでベルル。きっと楽しいよ。ベビーもデスのこと大好きだからはしゃいで沢山動いてくれるかも」


その時魔王はベッドメイキングに余念がなかったが、ラスを抱っこして真ん中に寝かせると傍らに座り、デスに手招きした。


「そのローブくしゃくしゃになるから脱げよ。灯り消してやっから」


「………うん」


――灯りを消すとデスがローブを脱ぎ、細く均整のとれたシルエットが仄かな灯りに照らし出された。

だが黒いシャツが灯りに透けて腕を映したが…骨だけの腕は細く、少しだけラスを悲しくさせた。
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