魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】

あなたを信じてる

グリーンリバーに着いてそのまま部屋に直行してベッドに下ろされたラスは、身体の疲れが一気にどっと出てベッドに倒れ込んだ。

思っていたより疲れていたらしく、腹がどくどくと脈打っている。

それに何よりもコハクの隠し事が気になるし、今眠ってしまったら…また地下に降りて探し物とやらをする気なのだろう。


「コー…私が眠っても傍に居てね」


「へ?でも俺ちょっとだけ地下に用が…デスに傍に居てもらえよ。すぐ戻って来るから」


ベッドに腰を下ろして大きな手で頭を撫でてくれたコハクの赤い瞳に一瞬だけ動揺の光が走ったのを見逃さなかったラスは、その腕を掴んで頬に引き寄せた。

…隠し事を全て明かしてほしいとは思っているが…実際そんなことは不可能だし、ただコハクが何か隠し事をしている時は大抵自分絡みのことだ。

ラスが悲しそうな顔をすると、コハクはラスの左手薬指に嵌まっているリングに触れながら、視線を落とした。



「すげえ大切なことなんだ。見つかりそうにねえけど…それでも何もしないよりは絶対探し続けた方がいいと思ってるんだ。だから…」


「コー…何を怖がってるの?私が関わってることなんでしょ?秘密にしてたってそれ位わかるんだから。だから教えて?コーだけ独りで悩むのは駄目。私たちもリロイたちみたいに夫婦になるんでしょ?」


「…チビ…」



心底驚いたように瞳を見開いたコハクは、ラスの背中に腕を回して抱き起こすと、唇を尖らせているラスの唇を指でつまんだ。


「時々チビは鋭くなるよな。…俺が隠してること…聴きたいか?でも…俺はチビを不安にさせたくねえんだ。だから…ベビーが無事に生まれてくるまで、できれば言いたくねえ」


「今でも不安だよ?コーが不安に感じてる気持ちが私にも伝わってくるの。だから話した方がすっきりすると思うから、話して。ね?」


潤んだ瞳で見つめてくるラスに不安が伝わっていたということは――この得体の知れない大きな不安を隠しきれていなかったということ。

それを後悔したコハクは、ラスを膝に乗せてぎゅうっと抱きしめると、震える息を吐いて呼吸を整えた。


「…わかった。話すから…俺の不安を明かす。本当は話したくねえんだけど…ばれてたら仕方ねえか」


真っ直ぐなラスの瞳に吸い込まれそうになりながらも、コハクは今までひた隠しにしてきた悩みを打ち明けた。
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