魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
グリーンリバーは相変わらず天気が良く、数年のうちに新たな公共事業も興して街はさらに発展していた。

相変わらずカイからは“王国に加盟しろ”と脅しのような手紙が届くが、コハクはそれを綺麗に無視して、ラスと幸せな暮らしを送っていた。


不死の魔法に成功して時が止まったラスは老いることもなく、そしてこちらも相変わらずコハクの膝に抱かれて何やら真剣な表情で本を読んでいた。

コハクはラスを後ろ抱っこしながら一緒に本を覗き込み、ちょっかいを出す。


「次は暑いとこかよ。汗かくぞ、いいのか?」


「でも海が綺麗って書いてあるよ。私あんまり泳いだことないし、それに水着だって着たいもん。あ、でもダイエットしなきゃ」


「ダイエット!?それ以上痩せたら骨だけになっちまうぞ、反対!絶対!」


腕を伸ばしてラスの手から本を強奪したコハクは、ラスの顎を取って自分の方へ向けさせると、指でぷるぷるの唇をなぞった。

綺麗で美しいまま変わらないラスに触れる時は、未だにどきどきしてすぐコーフンしてしまう。

キスをされるのだとわかったラスが瞳を閉じたので早速頂こうと思って顔を寄せた時――



「魔王ーっ!ママから手を離せー!」


「そうだそうだ、ママから手を離せ!」


「ちっ、来やがったかチビ勇者共め」



おもちゃの剣を手に部屋に乱入してきた5,6歳程の小さな勇者たちは、ラスを抱っこして離さないコハクの周りをぐるぐると回り、剣を振り上げて威嚇をする。


2人共に髪は真っ黒で、瞳は赤い。

顔はまさにコハクそのもので綺麗に整っており、2人の首には水晶のネックレスが下げられていた。



「ママを独り占めするな!魔王め、僕らがやっつけてやる!」


「ああん?俺をやろうってのか?いいじゃねえか、かかって来い。で?何戦何勝だったっけ?」


「う…っ、そ、その…3254戦……か、数えてない!次こそは勝つんだ!ママ、待っててね!」


「うん、わかった。頑張ってね」



コハクの遺伝子を綺麗に受け継いだ彼らもまたラスにぞっこんで、年子の2人はラスを抱っこしてにやにやしているコハクにじりじりと近付いていく。

もちろん手加減をして戦ってやっているのだが、時々恐るべき連携攻撃で立ち向かってくる小さな勇者たちは侮れない。

おもちゃと言えど鋭く切りつけられればラスを巻き込んでしまって怪我させるかもしれないので腰を上げようとした時…


ドアを力いっぱい押してひょっこり顔を出した者の姿に、コハクの表情が一気にとろけた。
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