My Love―お兄ちゃんとどこまでも―
沙亜矢と親父が、2人きりにならないように気にかけ。

注意してたというのに、まさかそんな事が……。

亜矢子さんが夜勤だったのを忘れて、帰りが遅くなった日が何回かある。

…その時に、か……?



「本当は言わないつもりでした。藤森さんに話したら傷付くって、沙亜矢はわかってたから……。でも、あの子を救えるのは私じゃないから」



光希ちゃんの言葉は、酷く胸を刺した。

傍に居る俺より、助けてくれてた筈。

支えてくれてたと思うのに、そんなセリフを言わせて。

情けないとしか、言い様がない。

沙亜矢と出会った時、これからの未来に期待を寄せてるような瞳だった。

なのに今は、真っ黒の目。

何も映さず、染まろうともしない。

ただ生かされてる、ロボットのようだ。



「正直に言います。沙亜矢は藤森さんが好きですよ」



「……俺?」



「藤森さんが助けてくれないと、傷を必死に隠して1人、面接する空港勤務の仕事に就いて寮に入ります。沙亜矢の成績から考えたら、確実に採用されますよね」



…沙亜矢が、俺から……。

就職し、離れて行く……。

自分でも就職して家を出ろと言って来たのに、まだ考えてもなかった。

驚きを隠し切れなかった。

例え俺が結婚しようとも。

沙亜矢が1人暮らししようとも、傍に居ると思ってた。

兄妹になったその日から、大切な存在で。

なかなか会えなくなるじゃねぇか……。



「藤森さん?」



加古さんに呼ばれ、現実に戻される。
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