ボクは桜、キミは唄う
翌朝、学校に着くと、私の上靴がなくなっていた。

柚木君が私を彼女だと公表してから、なんとなく、いつかこんな日が来るんじゃないかとは薄々感じていたけど。

実際されるとかなりへこむ。

柚木君、人気あるし。

陰から想い続けてる子が何人いるんだろう。

スリッパでペタペタ音を立てながら、私は朝のうちにあちこち上靴を探し回った。

廊下や玄関周りのごみ箱、体育館裏、更衣室……。

「ないや……」

また生物係になった私はいつも早めに学校来てるんだけど。

気づけば、クラスの半分以上が登校している時間になっていた。

柚木君が来る前には上靴を見つけ出して教室に戻りたかったのに。

「楓花?何してるの?」

また靴箱に戻り、あちこち探している所に、ナカちゃんが登校してきた。

「ナカちゃん」

すぐに昨日柚木君から聞いた北川君の気持ちを伝えたい衝動にかられたけど

『大丈夫』

柚木君の声を思い出し、飲み込む。

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