ボクは桜、キミは唄う
「ん?スリッパ?」

「あ……うん。上靴が」

“ないんだ”って言う前に、止めていた気持ちが溢れ出した。

靴を隠されるほどに誰かに憎まれていると思うと、怖くて悲しくて。

「ナカちゃーん。ふぇ〜」

「ちょっ、楓花?」

ナカちゃんは私から事情を聞くと、

「絶対あいつだ。楓花、行くよ」

と言ってものすごい形相で私の手を引っ張ると、3年生の教室に乗り込んだ。

3年5組。

脩君とあのマネージャーの教室だ。

「失礼しまーす」

ナカちゃんは堂々と教室に入り込むと、ごみ箱をあさり始めた。

そこからあっさりと私の上靴は出て来た。


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