ボクは桜、キミは唄う
教室にはまだ誰も来てなくて、二人きりでザリガニを観察する。

「去年思い出すね」

「うん。柚木君いつも寝てたよね」

「寝てないし」

「寝てたよ?机に伏せて」

「あれはー」

「あれは?」

「楓花に話しかけるタイミングをずっと、見計らってただけ。たまたま来た佐々木のザリガニ話に乗っかったりしてさー」

「……」

「……照れるから見るなよ!」

そんな風にタイミングを見計らってくれてたんだと思うと嬉しくて、見つめてしまった。

柚木君は恥ずかしそうに目をそらしたけど、見るなと言われると、余計に見たくなる。

そらした目を追いかけて、覗き込んでみた。

「そんなに見たら、またしちゃうよ?」

そしたら、いたずらっ子みたいな顔して、反撃してくる柚木君。

「また??」

何を?と聞こうとして、ハッとした。

キス??

「が、ががが学校ではちょっと」

「ぶっははははは。冗談だよ。しないから!さすがにそれは」







「なになになにー?何しちゃうってー?」








その時、昨日の北川君のように登場したのは、ナカちゃんだった。

「するとかしないとか、やらしー」

「な、ナカちゃんっっ」
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