ボクは桜、キミは唄う
どうしてなのかはわかんないけど。

待っていてくれた。

それだけで、こんなにも心が揺れる。





学校の玄関にたどり着くと、靴を履き替えてからちょうどその裏側になる、柚木君のクラスの靴箱を確認した。

まだ、来てない──

その時

「柚木、なにしてんのー?」

と言う男子の声が聞こえた。

ふと見上げると、ちょうど靴箱をはさんで向こう側に、柚木君の髪を見つけた。

柚木君がいるのは、私がさっき靴を履き替えた場所……

「え?あ、ちょっと」

柚木君の声。

「お前靴箱、1列間違えてんじゃね?裏だぞ裏ー」

「え?あーへへ」

「ばかじゃん。こいつー」

急いで柚木君のいるところへ向かおうとすると

「あー楓花ちゃん!今、みんなで集合写真とろうって言ってたの。はやく来て来て」

と、私を呼ぶクラスメート。

「う、うん」

どうしよう?と迷っていると、靴箱の上から柚木君がこっちをのぞきこんで来た。

「あ……」

私を見つけて何かを言いかけるけど

「柚木、写真とるぞ、こっちこっち」

と、男子達に引っ張られて行く。

「え?え?あ、靴まだ」

「早くしろやー」

「楓花ちゃーん」

「う、うん」

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