ボクは桜、キミは唄う
もし心に口があったら「きゅん」って言うんだろうな、なんて、どうでもいい事をわざと考えてみる。

でなきゃ、この胸のドキドキがどんどん大きくなって、柚木君にまで聞こえちゃうんじゃないかって心配だったから。

「それで……っと〜……」

トクントクントクン……。

「俺と」

トクントクントクン……。

胸がうるさくて、柚木君の声がよく聞こえない。

ドキドキしすぎて、目の前も霞んできた。

けど、多分この瞬間は一生忘れないんじゃないかって思ったんだ。

静かな音楽室で、聞こえるのは窓の隙間から入り込む風の音くらい。
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