海上船内物語
「吐かせるって・・・・・」
カイルが目を見開く。
ウルは困ったような表情で、笑って見せた。
「死神船は、変わったんだ」
ウルがカイルをベランダから出す。
部屋の中は外と正反対で、風も無く、少しの音も無かった。
「徹底、する。海賊達を陵駕して、この海で俺らに逆らえる連中なんて、誰一人出てこないように。」
ウルはカイルを強く睨んだ。
いつもとは想像できない鋭い目に、カイルは息を呑む。
「船長は、カイルとシーザを死神船に入れることを決意した。
だけど、所詮は死神船は政府の狗。
リゲは、海賊の血縁である二人を入れる代わりに、徹底して海上を支配しろ、歯向う輩は排除しろ、そうやって俺らに命じたんだ。」
ぐらり、と船が揺れた。
カイルが弾みで壁に体をぶつける。
「ウル、この船は今どこに向かってるの・・・?」
カイルは高波になってくる海を呆然と見つめながら、呟いた。
「“ベイズラリア”が眠るアジト、ここより東の方の港。そこに、奴らは居るんだろ?」
揺れる船に、カイルは声を漏らした。