海上船内物語
■美しき怪物を生きたまま手に入れる

□陰











□ □ □



「・・・最近、“女神”の姿を見なくなったねぇ」

「あら本当、どこかの盗賊にでも浚われたかしら」

「まさか、“女神”に限ってそんな事ないわよ」


乾物屋の女は遠くの海を眺めた。
そして、真似るように隣の主婦も海を見遣る。



「・・・・・・最近治安も悪くなったしねぇ」

「もしかしたら近々海が大荒れになるかもしれないわよ?」

「やめてよ、本当縁起でもない・・・でも、何か胸騒ぎがするわよねぇ」


人々が集まり、騒がしい街の一部。
丁度そこは海が見渡せる高地で、治安が良かった。



「あの子が居ないと何となく・・・物寂しいわねぇ」

「いやよ、私は。だって不気味じゃない」

「そうかしら?」




潮風が、街を吹き抜ける。







< 51 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop