ラブハンター☆
「おっはよ~。ママ元兄ィは?」


8時。桜は隣りの家の玄関をくぐりリビングを覗く。キッチンで食事の用意をしている女性が暖かい笑顔を向けてくれる。

「桜ちゃんおはよ♪元気だったらまだ寝てるわよ。午前様だったから」

元気達の母親。桜は親しみを込めてママと呼ぶ。ママは本当の娘のように桜を可愛がってくれる。

「デートの約束、してたのになぁ……」
「じゃ起こしてらっしゃい」
「は~い!」

リビングを抜けて勢いよく二階に上がる。元気は一番奥の部屋。その扉の前で2匹の猫が扉を引っ掻いている。

「ヤク、ヒメおっはよ♪」

ここの家の飼い猫、白い雄猫ヤク、黒い雌猫ヒメ。家の中で一番元気になついている。桜も2匹とはとても仲良し。よく連れ立って遊びに来る。そして桜は2匹には大恩があった。

二週間前、いつものように夜遊びの帰り。玄関の前には遊びに来たヤクとヒメ。「おいで。一緒に寝よ♪」声を掛けて中に入ろうとした時、

「俺も一緒に寝る♪」
ちょうど帰宅が重なった太陽とばったり。門をくぐり執拗に絡んで来る。相当酔っ払ってる。

-酒臭っ…-

「やーよ。早く帰って1人で寝たら?」
「やだ。桜寂しいんでしょ?慰めたげる♪」
-ガッターン!-

玄関先に押し倒される。男の力。抵抗できない。制服のブラウスが破られる。桜の危険を察知してヒメは尻尾を膨らませ毛を逆立ててしきりに太陽を威嚇する。


「やだやだ!ヒメ助けて!元兄ィ……元兄ィ!」
「やだなぁ。猫が助ける訳ないじゃん♪ほらもう抵抗しないの~………痛だっ!!」

太陽の手がスカートの中に潜り込みかけた時だった。背後に暗がりに長身の影……その影が太陽の横っ腹に蹴りをかました。

「太陽!何してんだ馬鹿!」
「………元兄ィ?」

吹き出す涙でよく見えないけど確かにそれは元気の姿だった。


その後、酔いが覚めた太陽は事の次第を全然覚えていなかった。両親と太陽にこっぴどく叱られたのは言うまでもないが…。部屋で寝てたらヤクが窓を引っ掻いて酷く鳴いてたから不審に思って窓を開けたら桜の悲鳴が聞こえたと後から元気に聞いた。

2匹が貞操の危機から救ってくれたと桜は心から感謝したのだった。
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