仇恋アベンジャー

私にまどろみが戻るよう、恵一は寄り添って身体を密着させる。

早くも暖まり始めた彼の体に腕を回してしがみつくと、長い腕で包まれた。

甘えているように見えたのだろう。

しかし私は暖を取りたいだけなのだ。

でも、暖かいし心地よいから悪くない。

これは別に、私が彼を好きになったというわけではない。

あくまで、カイロとして抱き付きたいだけ。

勘違いしてはいけない。

「由紀」

呼び掛けに応じることはできなかった。

なぜなら私のまどろみが眠りになったからだ。

夏はそうでもないのだが、冬の朝にはめっぽう弱い。

早かろうが遅かろうが、なかなか目覚めることができない。

できれば一日中こうしていたい。

誤解がないよう、念のために付け足しておこう。

恵一とイチャイチャしたいという意味じゃなくて、布団にくるまっていたいという意味だ。

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