仇恋アベンジャー

交差点で右に強い光を感じた。

そこからはよく覚えてない。

光は車のヘッドライトのはずだが、私はどう事故ったのだろう。

「ぶつかったわけじゃないんだね」

「ぶつかってたら、こんなもんじゃ済まないさ。警察の話によると、歩道まで滑っていったらしい」

無意識にハンドルを切ったのか。

「全然覚えてないや」

大したことが無かったからこそ笑える。

冬で良かった。

着ていた服や愛車は無惨な姿になり果ててしまったみたいだけれど、お陰で体は守られた。

所々に擦り傷があるけど、足のヒビで済んだならきっと儲けモノ。

「明日、念のために脳とかの検査があるから」

「うん」

「頭打って記憶が飛んでなくて良かったな」

私は飛んでいてほしかった。



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