好きとごめんのその先に


「……ゆりちゃんさぁ…」



ふっと目を逸らし、わたしの名を呼ぶ奏多。




「……どうしていつも、自分の気持ちを抑えるの…?」



腕を組みながら、伏せ目でそうきかれた。




「別に…抑えてなんか……」


「抑えてるじゃん」



わたしの否定を即座に否定。



「ゆりちゃん、いつも肝心なところで本音を言わない。
その場しのぎで誤魔化して、無理やり笑って…、出る言葉はいつも“ごめん”。
…どうして謝るの?」


「………」



…だってそれは、怖いから。




本音を言ったところで、いい方向にいかなければただのわがまま。



わがまま言って面倒な女になることが、怖くて仕方がない。



だったら、自分の気持ちを誤魔化して笑っている方がいい。




…それって、間違っているの…?
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