好きとごめんのその先に


過ぎる景色は、昨日まで奏多と一緒に歩いていた道。



昨日よりもまた多く桜の花が咲いている。





「…本当によかったのか?」


「え?」


「忠見さんとの結婚、パパのために我慢をして承諾したんじゃないか?」



バックミラー越しに、パパがわたしを見てきいてくる。





「…まさか。だったら今頃泣いてるって」



…なんて、ワケの分からないことを言って答えるわたし。



「忠見さんって、案外いい人だよ」



鏡越しのパパに向かってくすっと笑った。





「…そうか。…ありがとう」



そう言ったのを最後に、パパはもう何も言ってこなかった。
< 347 / 428 >

この作品をシェア

pagetop