好きとごめんのその先に
「―――…っ」
無駄に広くなった、2階建ての家。
夕梨亜がいなくなった今、これまで以上にしんと静かな空間になった。
彼女が置いていったリングは、まだくすみを知らないままの銀。
…こんな小さな輪で、今までつなぎとめていたなんて。
こんなもの、ただの安心材料にすぎなかった。
「…っ」
音にならない声で、俺はひとり涙を流す。
「なに泣くことあるんだよ、俺…」
ほんと、馬鹿みたいだ。
最初からこうするつもりでいたくせに。
…夕梨亜が触ることのない棚の奥で、ずっと眠り続けている婚姻届が、それを証明している。