好きとごめんのその先に
始まりの日
―――始まりは、1か月前。
そろそろ秋風が吹いてきた頃の、ある日の朝だった。
ピピピピ…
「ん…」
辺りがすっかり明るくなった朝7時。
目覚まし時計が、わたしの眠りに終わりを告げる。
耳障りな連続音を止め、重い体を起こした。
「夕梨亜、起きたかいー?早く支度しないと、奏多くんが来るぞー」
下の階からパパの声が聞こえる。
布団から出て服を着替え、リビングに向かった。
「おはよう、夕梨亜」
「おはよう、パパ」
用意してくれた朝食に手を付ける。
「じゃあパパはもう仕事に行くよ。戸締まりよろしく」
「分かった。行ってらっしゃい」
バッグを持ったパパが、いそいそと玄関に向かう。
パタンと音を立ててドアが閉まると、家の中はしんと静まり返った。
自分の立てる音だけしか聞こえない。
2人暮らしは、ずいぶんと静かな生活だ。