僕らが今いる今日は
・インターハイへ続く道

思いがけない二人

今日も風が気持ちいい。

足も腕も全てが軽く、このままどこへでも走っていけるような感覚が全身を支配する。

その感覚の前にはもちろん誰も走ってなんかいない・・・



トップでゴールを駆け抜け速報タイムを見る。


「よし」


記録は自己ベストには及ばないものの、最後の調整にしてはいい記録が出た。

自然と納得の言葉とともに、右手で小さく拳を握り締めガッツポーズというには控えめのポーズを取り、トラックを振り返る。

軽くダウンをして、ストレッチをしながら最後にゴールした選手を見届け控え室へと戻った。

これは俺の拘りで、全員がゴールするまでは絶対にトラックを出ない。

まだ、レースが終わっていないのにトラックを出るという行為は俺の中ではかなり失礼な行為だと思っているからだ。



控え室に移動し、ジャージに着替えて本格的にストレッチをする。

いつもならこの段階で桐島が声を掛けに来てくれるのだが今日は来ない。

1年生が入って間もないから、面倒に手間取っているのだろうかと思い、気にせずにストレッチを続けて体をほぐす。



いいレース運びだったが、今日はあいつが出場していなかった。

あいつがいないレースでいくら勝てても、心から喜ぶことはできない・・・


「まあ、それは県総体までのお楽しみだな」


ストレッチを終えて、一人で納得しながら荷物を整理して控え室を出ようとする。

俺の競技は終わったが坂高のテントに戻って後輩たちの応援をしなければと思い、少しだけ急ぎ気味にドアを開けると、そこには桐島と二人の女の子が立っていた。


「げっ」


小さくだが、思わず口から声が出てしまった。
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