華麗なる偽装結婚
「いや?駄目だよ。今日はそのままいて。
俺の妻はとても綺麗だということを皆に知らせないと」
「…え?まさか。
周りに公表するおつもりですか?」
「当たり前じゃないか。
社員や友人知人はもちろん、明日にはこの国の人々全てが俺達の結婚を知る事になるよ」
「どういう事?
…これはあくまで会長を納得させるためだけの書類上のものだわ。
何も全ての人に公表する必要なんて……」
「……阿美子ちゃん、俺は佐倉 怜だよ?
俺が話した些細な一言が翌日にはマスコミを賑わせてしまうんだ。
君との結婚は当然、隠してはおけないね」
「………」
「さ、次はこのまま髪とメイクを変えに行こう。
世間が驚くような美女に変身してもらうよ」
「………。
……こうやってあなたの着せ替え人形になる事も……
……秘書の仕事ですか」
「………え………。
………。
…………そうだな。
そう言えば、俺の思い通りになるのならそう思っていてくれたらいい。
………これは、秘書としての大切な任務だ」
「…………分かったわ。
私は、仕事においてはあなたの言う事には逆らわない。
だけど……人間としてはあなたを決して尊敬出来ないわ」
彼女はそう言って俺を睨みながら顔を上げた。
「……最高の誉め言葉だね、奥様」
俺は締め付けられるような微かな胸の痛みに気付かないふりをしながら彼女に微笑んで見せた。