愛を教えて

(2)恋の覚悟

食事の用意ができるまで、と万里子はリビングに案内された。

そこは、広大な邸にしては、小ぶりな部屋だ。

中央にソファが、左手奥にはグランドピアノが置かれている。キャビネットやカップボード、コートハンガー、花台に至るまで、同じイタリアンブランドのアンティークで揃えてあった。

そして、その中央のソファに悠然と腰かけていたのは、対照的な容姿を持つふたりの中年女性。

卓巳の叔母、藤原尚子、和子姉妹だった。



「卓巳さん、お帰りなさい。そちらが、噂のお嬢さんかしら」

「ええ、千早万里子さんです。こちらが和子さん……静香くんの母上だよ」


――確かに、雰囲気が似ている。

静香があと二十年経ち、歳相応の貫禄が備わってきたらそっくりになるだろう。

逆に言えば、若いころはさぞや男性を魅了していたに違いない。その女性的な体型から簡単に想像できる。

万里子が挨拶をして頭を下げた。


「静香さんから色々聞いておりますわ。わたくしはね、なかなか良縁に恵まれなくて。ですから、子供ふたりを連れて実家の世話になっておりますの」

「それは、さぞかしご苦労なさったことでしょう」


万里子の相槌に気をよくしたのか、しだいに和子の声は大きく、早口になる。


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