愛を教えて
「あの……今夜はもう、着ても、いいですか? 恥ずかしいので」


卓巳はうっかりしていた。

万里子はこの寒い中、上半身が剥き出しだった。抱き合っているときはいいが、離れた途端に体温はぐんと下がったはずだ。

卓巳は毛布を手繰り寄せ、万里子の肩にかけながら、


「ああ、もちろんだ。すまない、寒かっただろう? でも、ひとつだけお願いがあるんだが」

「なんですか?」

「脱がせたのは僕だから、着るのも手伝いたいんだが……いいかな?」

「……はい」


卓巳の本音は、もう一度あの胸にキスしたいと願っていた。

数え切れぬほど口づけて、卓巳自身もパジャマを脱ぎ捨て、裸で抱き合いたい。

それですべて、解決する訳がない。それでも、可能か不可能かではなく、ただ、そうしたかった。

だが、卓巳は体内を焼き尽くすような、燃え盛る激情を万里子から隠す。


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