愛を教えて

(6)真実を君に…

卓巳の腕の中はなんて心地がよいのだろう。

万里子は半分眠りかけた頭で、ボンヤリと考えていた。

悲しく辛い気持ちで目を開けたとき、そこに卓巳がいたのだ。夢か現実か区別がつかず、万里子は思わずキスをねだっていた。

あとになって考えれば、恐ろしく大胆なことを言ったものである。


(卓巳さんに裸を見られてしまったんだわ)


卓巳は綺麗だと言ってくれた。

なんて優しく、紳士的で素晴らしい男性なのだろう。それでいて、卓巳のキスはこの上なく情熱的だ。その唇が胸の先端に触れた瞬間、たとえようのない幸福感が万里子を包み込む。

次は、下半身を触られても、声を上げないように頑張ろう。

次こそは……。


「……り、こ。万里子? もう寝たのかい?」

「え? あ、いえ……まだ起きています」


万里子はハッとして返事をする。

横になったあとも、しばらくキスを繰り返したふたりだったが、空白の時間が万里子を夢の世界へと手招きした。

逆らう理由もなく、万里子が卓巳の腕の中でまどろみかけたとき、声が聞こえた。


「もしよければ、少し話をしたいんだが」


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