愛を教えて
そして、卓巳が万里子のために選んだ部屋は“グリーンパーク・スイート”。

その名のとおり、窓からはグリーンパーク、そしてバッキンガム宮殿を望める位置に面していた。


外廊下からドアは二重になっており、正面の大きなドアを開くとシッティングルーム――日本のリビングに相当する部屋がある。その奥がベッドルーム。内側の廊下にはもうひとつドアが付いていて、そこは来客を泊めることのできる、エキストラ・ベッドルームだった。



万里子は前々日までに用意したトランクから、パーティ用の衣装をはじめ荷物を出し、クローゼットに片づける。

ロンドンには一週間滞在する予定だ。

そのあと、ウェールズに向かい、フジワラ所有の古城ホテルに宿泊するプランである。

後半の一週間はすべて新婚旅行として楽しむ予定だった。


だが今となっては、ウェールズに行くことはないだろう。

ひょっとしたら三日後のレセプションパーティが終われば、すぐに帰国することになるかもしれない。


しかも卓巳は到着するなり、ジェイクを急かすように、仕事に行ってしまった。


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