愛を教えて
「卓巳さん……私を抱いて。あなたの好きにしてくれて構いません。卓巳さんの言うとおりにします。だから、私を抱いてください」

「……ま、りこ……」


卓巳は目を見開いた。名前を呼んだだけで、あとの言葉は続かない。


「でも、ひとつだけお願いがあります。愛してるって言ってください。愛されずに抱かれるのは、それだけはいやだから。今夜だけの嘘でいいから、私のことを愛してるって抱いてください」


万里子も床の上に跪き、卓巳の首に手を回した。万里子の頬を伝った涙が、卓巳の胸を濡らしていく。


涙に潤んだ声で「お願い」と繰り返す万里子に、卓巳の壊れかけた理性が耐え得るはずがない。


そのまま、卓巳は奪うようにキスをした。


< 622 / 927 >

この作品をシェア

pagetop