愛を教えて
『さあ、憂いは消えた。乾杯しようじゃないか!』

『待って、そんな、私はまだ……戸籍上、藤原卓巳の妻です』

『そんなことは心配しなくていい。彼が帰国しだい、離婚届を提出するだろう。君は自由になれるんだ。私は彼に劣らない愛を君に与えよう。約束するよ』


万里子は目を伏せ軽く首を左右に振った。


『愛は……いりません。家もお金も何も欲しくはありません。私を抱きたいなら早く抱いてください。そして、一刻も早く捨ててください。私の願いはそれだけです』


その万里子の言葉にライカーは息を飲み、目を見開いた。



ライカーは心の底から驚いていた。

万里子は思いやりと優しさに溢れ、愛に満ちている。そんな彼女からは、俄に想像できない言葉だ。


『何を言うんだい? 私は君を捨てたりしないよ。結婚の誓いに匹敵する契約書を交わそう。私は君を妻同然に扱うつもりだ。今はタクミのことを愛しているかもしれないが、すぐに忘れる。私が忘れさせて上げるよ。マリコ、愛している』


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