愛を教えて
「どうしてそんなっ!?」

「当然の報いだ」

「子供を諦める辛さは……卓巳さんもよくご存じのはずです!」

「ああ知ってる。だから、だ! 僕から君を奪った。君に、許し難い屈辱を与えたんだ。心臓を鷲づかみにされたような……あの恐怖だけは忘れられない。ライカーは生きたまま地獄に落としてやる!」


その怒りの深さに万里子は戸惑う。


「この話はもうおしまいにしよう。四日後にはロンドンを発たなきゃならない。さあ、奴のことは忘れよう、万里子」


両手を上げ、聞き分けの悪い子供を諭すように卓巳は言う。ほんの少し持ち上がった口角が卓巳をとても意地悪そうに見せた。


「ええ――卓巳さんも忘れてくださるのなら」


ため息をひとつ吐き、卓巳は前髪を掻き上げた。


「ああ、わかった。忘れよう」


どこか投げやりに即答する。そのまま万里子から視線を逸らせ、卓巳は吐き捨てるように言った。


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