愛を教えて
卓巳はとっさに受話器を掴む。

だが、すぐに放り出し、万里子のいるベッドルームに向かった。ノブを回すが、そこはしっかり施錠されている。


「おい、万里子! 開けろっ! 火災ならここは危険だ。早く開けるんだ!」


ドアを叩きながら卓巳は叫んだ。

直後、一瞬にして室内は闇に包まれた。電源が落ちたのだ。


同時にドアが開き、万里子が飛び出してきた。


「いやっ、怖い! 藤原さん、助けて!」


彼女は素肌にバスローブを羽織っただけの姿だった。

髪から雫が滴り落ちている。

手で押さえただけのバスローブは前が開きかけ、暗闇の中、白い肌が妖しく浮かび上がった。


卓巳が息を飲んだ瞬間、彼の胸に万里子が飛び込んできた。


< 84 / 927 >

この作品をシェア

pagetop