愛を教えて
観覧車にはシースルーもあったが、ふたりとも普通のタイプにしようと話し合う。一周約十六分、六人乗りのゴンドラだ。

ふたりがチケットを購入しようとしたとき、再び卓巳が注意書きに目を留めた。


「万里子、ダメだ」

「え?」


そこには『不測の事態に対処しにくいため妊娠中の方はご利用できません』と書かれていた。



少し離れた位置で、ふたりは観覧車を見上げる。


「明後日だったら乗れたかも……」


万里子は目を伏せると、小さく笑って言った。

卓巳はそんな万里子の髪をそっと撫で、


「いや、次は一年後だ。三人で来よう」

「……はい」


次々とパターンを変えるイルミネーションに彩られた観覧車を見上げ、思いを馳せるふたりだった。


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