愛を教えて
(二年間で一生分をこの人に尽くそう。そして一生の思い出にしよう)


万里子は思いの欠片でも、言葉にできて嬉しかった。



そして、万里子の“思いの欠片”は卓巳の心に届いていた。



「僕にはどうしても君の行為は許せない。だが、若気の至りという言葉もある。今の君が、ふしだらで恥ずべき女性だとは思っていない」


卓巳はその先の言葉を口にするかどうか迷うが……。


「形だけだが、君は二年間僕の妻となる。何かあれば、妻のことは全力で守る。祭壇の前で神に愛は誓えないが……代わりに、君を失望させないことを誓おう。それと、僕は夫になるんだ、名前で呼んでくれ」

「はい……卓巳さん」


万里子の笑顔は卓巳の中にひとつの思いを根付かせた。


(今夜はこの、役立たずの相棒に感謝しよう。こいつのおかげで間違いなく、神に生涯の貞節は誓える)


この夜、ふたりは結ばれた。

随分な遠回りに見えるかもしれない。愛という言葉も、体の距離が縮まることもなく。

それでも、魂が互いを生涯の伴侶と定めた夜だった。


< 97 / 927 >

この作品をシェア

pagetop