ガルドラ龍神伝―闇龍編―
3


十人の龍戦士達が作戦会議のためにリタの部屋に行った頃から、薄い影のような黒雲が太陽を隠し、フィブラスを黒く染めていく。


それはまるで、この魔界全体を闇で覆い尽くそうとしているかのようにも見える。


そんな不安を胸に抱きながらリタは、ランディー王に今日のことを報告するため、謁見の間の扉の前に立つ。


「お疲れ様です、殿下。


どうぞ、お通り下さい」


門番のディフレンが、リタを中に入れた。


その玉座にはいつも通り、ランディー王が元気そうに座っている。


「父上、お体の調子は、もうよろしいのですか?」


「ありがとう。もう大丈夫だ。


昨日は多大な心配と迷惑をかけて、本当にすまなかったな」


ランディー王は、苦笑して礼を言った。


リタは早速、今日の会議での決定を報告する。


話を聴いている時の王の顔は、真剣そのものである。


一通り話が終わると、王は口を開く。


「龍戦士隊結成か……。


良い案ではあるが、隊長と副隊長は決めてあるのか?」


ランディー王は訪ねた。


意表を突かれたリタは、現状を言う。


「そ、それが……。


今回は臨時結成ですので、特にメンバーは決めていないのです」


それを聴いた王は、ただ首を縦に振るだけだった。


龍戦士隊ルインは、今日の昼頃にレザンドニウム領国に向けて出発する。


私を始め、ヨゼフとナンシーが代表となって、キアの所へ説得するために行く。


だが、相手はかつて、自分を奴隷として働かせた領主。


そんな相手を説得することなんて、私達にできるのだろうか?


リタの心に、再び迷いが生まれる。


その深刻そうな顔を気遣ってか、王はまた口を開く。


「リタよ、相手はお前を幽閉した大人だ。


そのような大人を説得するのは、辛く、大変かもしれない。


だが、人生はどんな辛いことに直面しようとも、堪えなければならない。


無事にお前がこの国に帰ってくることを、私達は砂龍神デュラックに祈る」


「ありがとうございます、父上。


では早速、今日の昼頃から行って参ります。


またお会いしましょう」


リタは一礼して、謁見の間を後にする。


彼女は自分の部屋に戻り、九人の仲間達と共に、レザンドニウム領国に行く準備をした。
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