不良狼の一途な溺愛

「さすがの蓮も、柚ちゃんの涙には…適わないみたいだな。」


えっ…。
今の、もしかして蓮君のお兄さん…!?


声の聞こえてきた方に顔を向けたけれど、涙でぼやけている。


ゴシゴシと擦っていると、蓮君がため息を零した。


「なんで兄貴がここにいるわけ?」


「んー、柚ちゃんのことが心配で探してた…ってところかな。」


「そもそも、なんで兄貴は柚のことを知ってるんだよ!」


「名前は少し前から知ってたんだけど、まさか今日…本人に会えるのは思わなかったよ。柚ちゃん、お前には勿体ないぐらいの可愛い女の子だな。」


「前から名前を知ってた…って、どういうことだよ!っていうか、馴れ馴れしく柚の名前を呼ぶんじゃねぇ!」


おっ…怒ってる。


お兄さん相手に、何もそんな声を出さなくてもいいと思うんだけど…。


瞬きを繰り返しながら驚いていると、お兄さんはクスクスと笑い始めた。



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