碧いボール

帰ってきた顧問

あたしは芦田から全て聞き終えて、びっくりした。
いや、それは誰でもびっくりするだろうけど。
あたしは、まったく知らなかった。
キャプテンなのに、部員だけでなく顧問の異変にも気づかないなんて。
芦田が抱えているのと同じくらいに、あたしも悩んでる。
自慢じゃないけど、芦田に負けないくらい悩んでるよ・・・。
芦田の秘密を聞き終えて、ストレートに干渉するのも気が引けて、あたしは自分の悩みを吐き出すことにした。
今までなら芦田が目の前にいるだけでイライラしていたけど、それをこらえて話を聞いてよかった。
今なら、芦田のことも心から受け入れられる。

あたしは全部芦田に話した。

芦田はなぜか泣いてくれた。
それが偽造なのか、本心なのかはあたしにはわからないけど、心の奥が熱くなって。
目から涙があふれて止まらなかった。
あたしたちはただ泣き続けて、目の赤みが引いたところで教官室を出た。

その日、芦田は「考え直したい」と言って早退してしまった。
でも・・・

次の日から、芦田は休むことなくあたしたちに指導してくれた。
みんなは素直に喜んでいた。
・・・・・・良かった。
芦田・・・いや、芦田先生、これからも、よろしくお願いします。


  杏Side
有希と芦田が教官室に入って、あたしはずっと、いつ出てくるかと見ていたけど、なかなか出てこない。
あたしは、いけないことだとわかっていても、やってしまった。
教官室の薄い扉に耳を近づけて、会話を聞いていた。
芦田が何か話していたけど、あまり聞こえなかった。
次に、有希が悩みを話し始めた。
悩み・・・っていっても、カウンセラーとかそんなのじゃなくて、もっとリアルな悩み。
あたしたちのことと、父親のこと。
あたしはそれを知っていたから別に驚かなかったけど、次の瞬間、教官室から泣き声が聞こえてきた。
有希が慰めてるから・・・泣いているのは芦田だ。
芦田・・・何やってんの?
大人のくせに、バカじゃないの??
そう思ったけど、きっと有希にしか話していない過去があるんだ。
しばらくして有希と芦田が教官室から出てきて、芦田はすぐに帰った。

驚いたのは、次の日から芦田が休まずに練習にきて・・・顧問らしいことをしてたこと。

「条件」・・・もしかしたら、もしかしちゃうかも。



< 17 / 55 >

この作品をシェア

pagetop