碧いボール

「君達ふたりが、県選抜の一時選考通ったよ」
一瞬・・・思考回路が停止した。
そして次に、自分の耳を疑った。
杏と顔を見合わせる。
嘘でしょ??そんな顔をする杏。
多分今、あたしもそんな顔してると思う。
だって、県選抜だよ!? 
あたしたちみたいな弱小チームで目をつけられるっていうのは、自分で言うのもなんだけど・・・よほど実力があるって証拠。
つまりあたしと杏は、県に実力を認めてもらえたってこと。
ほら。やっぱり初勝利は、清勝にとって、大きかったんだよ。
・・・そう、抱えきれないほどに。
 
あたしと杏は、純粋な嬉しさと、不安と・・・たくさんの気持ちが入り混じった感情をこらえきれずに、ただ芦田を見つめてた。
芦田はそれを悟ったのか、
「俺は、お前達なら大丈夫だと思うよ。選抜なんて遠い世界なんだ。落ちるの覚悟で楽しんでおいで」
と言った。
端から見れば無責任な顧問に見えるかもしれない。
でも、訳アリなあたしたちにとって、芦田のこの言葉は、どんなエールより勇気づけられた。
清勝女バス・・・というよりあたしたち二人に、新たな目標ができた。
選抜に入るのが目標ではない。
選抜のセレクションを、めいっぱい楽しむこと。
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