碧いボール
あるんだろうな。
よし。とりあえず、話を聞いておこう。

俺は相川の話を黙って聞いていた。
衝撃を受けた。
俺もショックだった。
俺は・・・相川の父親を知っている。
バスケについて俺よりかってくらいくわしくて、娘想いのいい人だった。
俺はしばらくの間放任してたから、生徒の親についてはよくわかんなかったけど、相川の親はよく覚えてる。

ある日の練習試合。
普段の練習もろくに見てやれなかった俺は、練習試合だからって急にでしゃばることもできないで、軽く変装して、相手の体育館の入り口に立って試合展開を見ていた。
すると、どこから来たのか一人の男の人が近づいてきた。
道でも尋ねられるのかと思って、わからないと答える準備をしてたら、以外にもその人は俺にこう言った。
「芦田コーチですよね?」
俺はとまどった。
でも、間違ってないのでそうです、と答えた。
何でこの人は俺のことを知ってるんだろう?俺は知らないぞ。
「有希から話を聞いております。あなたが私のような人なのではないかと思って、ぜひ一度お話したいと思っていたのです」
話?それにしても言葉が丁寧だな。
ていうか・・・有希?有希って相川??
ああ・・・そういうことか。理解した。
そして相川の親父さんはもう一度「お話したい」と言って、俺を自分の車に連れて行った。
コンパクトな軽自動車。
中も質素で、ラジオからは陽気な音楽が聞こえてくる。
無名ミュージシャンの曲かな。知らない歌だ。
俺はその曲が妙に気に入って、歌詞に聞き入っていた。
相川の親父さんは急にラジオを消した。
真剣な話だとわかった。
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