碧いボール
俺も、親父さんに全て話した。
・・・引かれるかな。
そう思ってたけど、もちろん親父さんはそんな人じゃなくて。
親父さんは、俺の話を聞いて泣いてくれた。
こんな俺なんかのために泣いてくれたんだ。
まだ、俺の気持ちをわかってくれる人がいる。
俺の人間性を認めてくれる人がいる。
それだけで嬉しかった。
年がいくら離れていようと、いじめはすべてをなくすものだ。
自分に自信が持てなくなる、史上最悪の行為なんだ。
「辛かったでしょう、苦しかったでしょう、悲しかったでしょう」
親父さんは泣き続けた。
俺さえも泣いてないっていうのに、俺のために泣き続けた。

そんな出来事を思い出して、少し微笑んでしまう。
でも今は、そんなときじゃないんだ。
相川は悩んでいる。
あのときの俺のように。親父さんのように。
あのとき、俺は相川の親父さんにどれだけ助けられたか。あの存在が、どれだけ勇気をくれたか。
親父さんに直接返すことのできない恩を、俺がその娘に返す。
なるだけ相川の力になろうと思った。
相川は言った。
「何で、お父さんはあたしに話してくれなかったのかな?」
・・・何も言えない。
「家族なんだから、一番最初に話してほしかったよぉ・・・」
言えない。俺はもう知ってました、なんて、口が裂けても言えないじゃないか。
「先生?」
「あ、悪い・・・。親父さんにも、色々思うところがあったんじゃないのか?ほら、しばらく離れてたんだろ?」
「え、親父さん?先生、何その呼び方!!なんか親しかったみたいだねー」
相川の声が急に元気になる。
そんなに、自分の親に親友がいることが嬉しいのか?そんなもんなのか?
「親しい・・・のかな」
俺は相川に曖昧な返事をした。
「なにそれー。お父さんのこと、知ってんの?」
「知ってるよ。話したことはあるよ」
大事な大事な悩みをな。
「そうなんだ・・・。どんな人だった?」
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