碧いボール

現実vs妄想&願い

「せんぱーい」
あたし派の部員があたしのことを呼びながら駆け寄ってくる。
「どうした?」
このかわいい後輩は、あたし派の中でも一番熱心だと思う。自分で言うのもなんなんだけどね。
「今日のランニング、何分ですか?」
「んー、どうしよ。中体連に向けてオフェンスの練習したいとこだけど。5分でいいかな」
「わー!やったぁ。先輩、ありがとうございます」
そう残して、仲間のもとに走っていく。
なんか、青春って感じでいいなぁ。
あたしが妙なことに感心していると、芦田が近寄ってきた。あたしは杏に言われるまで気づかなかったけど。
「びっくりさせないでくださいよー、先生」
「別にさせてないよ。相川が勝手に驚いてるんでしょ」
「まあ、いいじゃん、二人とも」
杏が仲裁に入る。
「で、どうしたんですか、先生」
「ああ、それがね、もうすぐセレクションでしょ?だから、あんたたち二人だけ、今日別メニューで練習しようかな、って考えてたんだけど」
「別メニュー?」
あたしと杏の声が重なる。
「みんなはどうするんですか?」
「もうみんなに承諾はとってあるんだ。だから、みんなは今日廊下練にして、二人で体育館使おうかな、って」
「男子は?」
「男子はもちろんいるけどさ」
「二人でやって練習になるんですか?」
「必要なところはみんなの助けを借りるよ」
あたしは迷った。
セレクションは、あたしたちにとってもちろん大切なことだけど、みんなにとっては関係ないに等しい。
迷惑だって思ったりしないのかな?中体連もあるわけだし。
「今日だけだよ。どう?みんなもアップくらいになるようなことはさせるからさ。二人で独占っていうんじゃなくて、中心として」
それならいいかな。あたしが心を動かされ始めたとき、杏はどうなのかな、と目をやると、杏はとても嬉しそうな顔をしていた。
「杏。目が輝いてますよ」
「あはは~」
久しぶりに杏に冗談を言った。笑い合えるって、なんか・・すばらしい。
「それならいいですよ。やりましょ」
こうして、杏とあたしの地獄の一日?楽しいけど大変な今日の部活は終わった。
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