碧いボール
だけど今は、あたしに悪いことなんて何も無いでしょ?
杏を呼ぶなら、初めから呼んでろっての。失礼極まりないな。
あたしの中に密かに眠ってた男の自分が少しだけ目を覚まして、本物のあたしと格闘する。
これには、杏も芦田も何も言えないみたいで、ただオロオロとあたしを見つめてる。
そりゃ、杏、あんたはいいだろうね。どんでん返しの選抜だもんね。
完全に壊れたあたしを見て、選抜委員会は言った。
「大変失礼なことを致しました」
「当たり前だよ!!」
思わず声を荒らげるあたし。
「はい、わかっております。大変失礼なことをしましたので、今回、有希さんを、選抜にしたいと思うのですが・・・」
委員の戸惑ったような声に余計に腹が立つ。
とたんにあたりから反対の声が上がる。
「そいつは下手だったのに!あたしのほうがまだうまいわ!」
・・・失礼だな。
もういい。
選抜なんてごめんだ。
もしかしたら、だなんて、少しでも期待してたあたしがバカだった。
あたしは走って逃げ出した。
走って走って、やっと会場が見えなくなると、スピードを緩める。
疲れた。
肉体的にも、精神的にも疲れた。
あんな辱めをうけることになるなんて、想像もしてなかった。
でも、もういいんだ。
選抜とは決別した。もう関わらない。
幸い、お金を多めに持ってきていたので、途中でタクシーをとめて、あたしは愛するお父さんの待つ家のドアを開いた。
「ただいまぁ~」
涙声になりながら、靴を脱いだ。
少し間があって、何かがおかしいことに気がついた。
車はあった。靴もある。
いつもなら、あたしより元気に「おかえり」を言ってくれたお父さんの返事がないのだ。
トイレかな?そう思って、トイレの戸をノックしてみる。
コンコン。
返事はない。
朝に感じた嫌な予感を思い出して、あたしはゾッとした。
やっぱり、なんとしてでも行くべきではなかったのでは?
思い違いだといいけど、と、恐る恐るリビングの戸を開いてみる。
その瞬間、あたしは今まで考えてたことなんて頭から消え失せて、胸に後悔が渦巻いた。
「お父さん、お父さん!」
目の前に倒れているたった一人の家族を見て、あたしはただ呆然と立ち尽くしていた。
何をしていいのかわからない。ドラマみたいに上手に応急処置なんてとれない。そもそもこれが何なのかもわからない。
杏を呼ぶなら、初めから呼んでろっての。失礼極まりないな。
あたしの中に密かに眠ってた男の自分が少しだけ目を覚まして、本物のあたしと格闘する。
これには、杏も芦田も何も言えないみたいで、ただオロオロとあたしを見つめてる。
そりゃ、杏、あんたはいいだろうね。どんでん返しの選抜だもんね。
完全に壊れたあたしを見て、選抜委員会は言った。
「大変失礼なことを致しました」
「当たり前だよ!!」
思わず声を荒らげるあたし。
「はい、わかっております。大変失礼なことをしましたので、今回、有希さんを、選抜にしたいと思うのですが・・・」
委員の戸惑ったような声に余計に腹が立つ。
とたんにあたりから反対の声が上がる。
「そいつは下手だったのに!あたしのほうがまだうまいわ!」
・・・失礼だな。
もういい。
選抜なんてごめんだ。
もしかしたら、だなんて、少しでも期待してたあたしがバカだった。
あたしは走って逃げ出した。
走って走って、やっと会場が見えなくなると、スピードを緩める。
疲れた。
肉体的にも、精神的にも疲れた。
あんな辱めをうけることになるなんて、想像もしてなかった。
でも、もういいんだ。
選抜とは決別した。もう関わらない。
幸い、お金を多めに持ってきていたので、途中でタクシーをとめて、あたしは愛するお父さんの待つ家のドアを開いた。
「ただいまぁ~」
涙声になりながら、靴を脱いだ。
少し間があって、何かがおかしいことに気がついた。
車はあった。靴もある。
いつもなら、あたしより元気に「おかえり」を言ってくれたお父さんの返事がないのだ。
トイレかな?そう思って、トイレの戸をノックしてみる。
コンコン。
返事はない。
朝に感じた嫌な予感を思い出して、あたしはゾッとした。
やっぱり、なんとしてでも行くべきではなかったのでは?
思い違いだといいけど、と、恐る恐るリビングの戸を開いてみる。
その瞬間、あたしは今まで考えてたことなんて頭から消え失せて、胸に後悔が渦巻いた。
「お父さん、お父さん!」
目の前に倒れているたった一人の家族を見て、あたしはただ呆然と立ち尽くしていた。
何をしていいのかわからない。ドラマみたいに上手に応急処置なんてとれない。そもそもこれが何なのかもわからない。