ケイヤク結婚
「『やっぱり』と言うべきですかね。そんなに赤くないし、目立たないから平気ですよ……って俺から言うのは変かもしれませんが。どこかにぶつかって赤くなっているのかな?って他の人なら思う程度です」

「私、侑とは何も……」

 私は首を振る。

 本当に何も無かった。襲われそうになったのは事実だけど、侑は最後まで強要しなかった。

 途中で、ちゃんと止めたから。だからってそれを証明するモノなんて何もない。

 ただ大輝さんが信じてくれるかどうかってだけ。

 信じて欲しい。大輝さんには、私の言葉を信じて欲しい。

「わかってます。少し外を歩きましょう」

「え?」

「手首が赤く腫れてます。散歩してから、会場に戻っても、パーティには間に合います」

「あの…本当に…」

「この話はやめませんか、綾乃さん」

 大輝さんが足を止めた。

「大輝さん? 私はただ…信じてもらいたいだけで」

「だからわかっています、と言ったはずです。俺たちは互いの夢を叶えるために契約しただけ。信頼や愛情で結ばれている関係ではないはず」

 大輝さんが、ため息をついた。
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