ケイヤク結婚
―綾乃side―
「綾乃さんが嫌いで、冷たい態度をとったわけじゃないんだ。ただ……俺……」

 そこで言葉が切れた。

 どうやら大輝さんが、眠ったようだ。

 ワイシャツにズボン下を履いたまま、掛け布団の上にごろりと横たわっている。

 スーツだけはやっとの思いで脱いでたから、これは皺にならないように掛けておくべきだよね。

 私は畳の上に放置されてしまった大輝さんのスーツに手を伸ばした。

 ハンガーはきっとあの洋服ダンスに入ってるよね?

 私はまだ大輝さんの温もりが残っているスーツを腕にかけたまま立ち上がり、洋服ダンスへと足を運んだ。

 ガチャっと扉の開く音がして、洋服ダンスの中が垣間見える。

 ズラッと綺麗に並んでるスーツを見て、大輝さんが几帳面な性格なのだと窺える。

 ううん。タンスの中だけじゃない。

 部屋もすっきりしてて、片付いてる。よく男の人の部屋は、ごちゃごちゃしてて、男臭がするって聞くけれど。

 男の臭いもしなければ、室内は小ざっぱりしてる。

 扉についている鏡に自分が映っているのに気がついた。
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