ケイヤク結婚
―大輝side―
 会議での発表を完璧にこなし、俺はファイル片手に廊下に出た。

 会議を終えた社員たちが、各々の部屋へと戻っていく廊下で俺は、ゆかりと目が合った。

 ゆかりはパッと視線を逸らすと、隠れるかのように資料室に入っていく。

 俺はゆかりの後を追って、資料室に足を向けた。

「残念だったな」と俺は資料室に入りながら、口を開いた。

「何のことかしら?」

「俺に恥をかかせたくて、書類を破棄したのだろう?」

 ゆかりは腕を組むと、資料室の棚に寄りかかった。

「資料を破棄した旨を新垣に知らせて、今回の会議での勝者は新垣だと伝えたんだろ?」

「違うわ」

「違わない。あの資料を破棄できるのは、ゆかりしかいない」
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