君のための嘘
「少しは強いのかと思ったら、酔いつぶれちゃったわ」


ソファで座るようにラルフの隣で眠ってしまった夏帆を見てリリが言う。


スタッフやカメラマンは帰り、部屋に3人だけが残っていた。


「ラルフ、話は聞いたから手伝ったけれど、本当にこれでいいの?」


いつものふざけたリリの口調は変わり、真面目な声色で夏帆の頭を自分の組んだ足に乗せて髪を梳くラルフに言う。


「ええ、この子は……幸せにならなければいけない子なんです」


「やり過ぎのような気もするけれど……まさかラルフがねぇ……」


リリはラルフに協力を求められて事情を知った。


友人に起こっていることを聞き、リリは男前の気質で引き受けたが、ふたりが心配になる。


「そうしなければ信じてもらえませんから」


誰に信じてもらうのかは事情を聞いたリリには分かっていた。


その人物はラルフのかなりの強敵であろう。


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