君のための嘘
夏帆はラルフのクリスマスプレゼントを悩んだ末、マフラーに決めた。


旅行の前日に貰ったアルバイト代で、仕事帰りに買って帰った。


温かそうな茶色の地に水色、黄色がストライプ入ったマフラーだ。


それを大事に抱えて夏帆はマンションへ戻った。


豪奢なマンションのエントランスが見えた時、一台の黒塗りの高級外車が停まった。


運転手が出て来て後部座席のドアを開けている。


少し離れた所から夏帆は見ていたが、後部座席から降りた男性を見て息を呑むほど驚いた。


「ラルフっ……」


その声はラルフまで届かない。


運転手がうやうやしく頭を下げると、ラルフはドアの向こうへ消えた。


なんで運転手が? どう見ても高級な外車……。


ラルフは普通の会社員じゃないの?


茫然と佇み見ていると、車は静かに去って行った。


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