君のための嘘

抑えきれない想い

ラルフは座椅子に座ると、「お酒はいかがいたしましょうか?」と仲居に聞かれる。


「夏帆ちゃんは飲みたい?」


「ううん、このお料理だけでお腹がいっぱいになりそうだから」


ラルフは仲居に酒を断った。


「ごゆっくりなさってくださいませ」


仲居が出て行くと、ふたりは食べ始めた。


「ラルフは飲んでもいいんだよ?」


「いや、あとで飲むから、今はいらない」


あまり会話が弾まない。


夏帆は目の前の料理に集中しているフリをして、気になるラルフをちらちらっと見ていた。


きれいな箸使い……。


マンションのエントランスで見たシーンからラルフはかなり裕福であることがわかる。


ラルフはいったい何者なの?


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