君のための嘘

初めての経験

ラルフが入って来た気配に夏帆の心臓は一瞬止まりかけた。


夏帆の全身は震えた。


冷気で肩が冷たくなったが、その震えは寒さからくるものではない。


すぐ近くにラルフがいる。


このシチュエーションでは更にラルフを意識せずにはいられない。


ラルフがいなくなった後、夏帆は誘ってしまった事を後悔していた。


避けなくては……と思うのに、口では別の事を言ってしまう。


ラルフが近くにいると、もっと近くにいて欲しい。


もっと身近にラルフを感じたい。


そんな想いが、理性を裏切るのだ。


どうしよう……心臓が口から出そうなくらい暴れている。


その時、夏帆の背後でザバーンと湯の音がして、湯船が揺れた。


< 260 / 521 >

この作品をシェア

pagetop