君のための嘘

葛藤

まだ痛みはあったが、これ以上遅いと夏帆が気にして現れるかもしれない。


こんな姿は見られたくない。


ラルフは大きく呼吸をすると、ふらふらと立ち上がり冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを手にした。






戻って来たラルフを見て夏帆はホッと安堵した。


「ラルフ……大丈夫だった?」


大切な用で電話が長かったのだと夏帆は思って聞いた。


ラルフはベッドに腰を掛けてフッと笑みを浮かべた。


「大丈夫って聞くのは僕の方だよ。身体は大丈夫? 水を飲むかい?」


「うん……」


身体は大丈夫?と聞かれて、先ほどの甘い時間を思い出してしまい夏帆の頬がピンク色に染まる。


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